群馬県邑楽郡大泉町、ブラジリアンプラザ、日本定住資料館訪問記

 2020年11月のある晴れた日のお昼、群馬県伊勢崎市のベトナム料理店兼カフェ(詳細は下記エントリーをご参照のこと)での食事を済ませ、私たちは群馬県邑楽郡大泉町にあるブラジリアンプラザに向かった。

群馬県伊勢崎市、工業団地の一角にあるベトナム料理店兼カフェに立ち寄ってみた - ノンザンライフ

https://nongdanlife.hatenablog.com/archive/2020/11/19

 今回ごいっしょさせていただているXさんは、自動車を運転されながら、群馬県(のこのあたり)は道が真っ直ぐですね、というようなことを言われる。道の両側にはところどころに工場、農地、民家、コンビニエンスストアなどが立ち並んでいる。途中、自転車に乗った若い男性グループを見かけ、所作や服装などからたぶんベトナム人ではないだろうかと思ったのだが、Xさんとも意見が一致した(その後、目的地のブラジリアンプラザの建物の前でもベトナム人女性を見かけた。その女性はベトナム語でおしゃべりしながら歩いていたので、ほぼ間違いなくベトナム人ではないかと思われる)

 

 ブラジリアンプラザというのは、元々大泉町やその周辺に在住する日系ブラジル人向けに建てられた比較的大きいショッピングセンターで、十数年前にXさんが訪問されたときは繁盛していたとのことだ。

 今回の群馬行きの前に調べたところ、

https://gunma-dc.net/tourism/147/

ブラジリアンプラザ 日本定住資料館

等で紹介されているように、現在(2020年11月の時点)ブラジリアンプラザ内には日本定住資料館というミニ資料館があるようだ。資料館は、約110年前から第2次世界大戦後の一時期にかけてどうして日本人が移民としてブラジルに渡り、約30年前になぜその子孫である日系ブラジル人が来日したのか、日本へ来てからどのような生活を送っていて、どのような問題を抱えているのか、ということを説明しているのだという。 

 下記の記事

https://www.nikkeyshimbun.jp/2015/151201-71colonia.html

群馬県大泉町にブラジル資料館を=「コミュニティ再生拠点に」

によると、ブラジリアンプラザにある資料館の設立には、

1995年に日本初のブラジル人向け商店が約10店舗も一カ所に集まったショッピングセンターとして同プラザは開館し、当時大きな話題を振りまいた。90年代後半には「ブラジルタウン」とも呼ばれた大泉町だが、金融危機後に同種の商店が減って、同プラザには数店が残るのみだという。
 そのシンボル的な場所を「コミュニティ再生の拠点」にするのが、この構想だ。累計で6万人余りの外国人を雇用した実績がある大手業務請負会社「アバンセ」の林隆春社長が中心になり外国人援護を目的に同NPOは04年に創立された。同社長が同プラザの建物も購入し、構想実現の後押しをする。

という経緯があったようである。

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写真01 群馬県大泉町のブラジリアンプラザ

  ブラジリアンプラザに到着する。2階建てのそれなり以上に大きい建物だ。1階に旅行会社と不動産会社があるのだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響なのか、2社ともに休業しているようで、それなりの広さを持つ建物で唯一オープンしているのが日本定住資料館という資料館のようである。

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写真02 ブラジリアンプラザ内の日本定住資料館

 日本定住資料館に入館してみる。私は展示されていたラミネート加工された説明パネルなどを一通り全部丁寧に見ることにした。ポルトガル語でコミュニケーションができ日系ブラジル人事情もよくご存知のXさんは、大ざっぱに展示をご覧になった後、資料館の説明員の方とお話されているようだった。

 大変残念なことにこの資料館には、日本とブラジル両国、日本人とブラジル人、日系ブラジル人の往時の歴史を物語る現物の資料がほとんど展示されていないようであった。展示のメインコンテンツはラミネート加工された説明パネルであった。そのような点が大いに期待外れだったのではあるが、他方、相当な広さのスペースを資料館としてオープン、維持され、説明員の方がいらっしゃるということだけでも、関係者の方々が様々な努力、尽力されているのだろうとお察しする。

 ラミネート加工の説明パネルで興味深かったのは、なぜ日系ブラジル人大泉町に多人数在住するようになったかということを説明したものと日系ブラジル人のお子さんの教育問題を扱ったもの、日系ブラジル人の高齢化問題や障碍者(しょうがいしゃ)の問題をテーマにしたものである。

 子どもの教育問題や高齢化問題や障碍者(しょうがいしゃ)の問題は、今後日本国内で人数が増えていくであろう在住ベトナム人コミュニティーにとってもおそらく深刻な問題になるだろうと思い、興味深く説明を読んだ。

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写真03 ラミネート加工された説明パネル1

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写真04 ラミネート加工された説明パネル2

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写真05 ラミネート加工された説明パネル3

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写真06 ラミネート加工された説明パネル4

 見学が終わってから、資料館の説明員の方のご案内で、Xさんといっしょに2階にある「リスタートコミュニティー支援センター」と呼ばれる生活困難に陥った外国人向け一時避難シェルターを見学させていただくことになった。そのシェルターは、宿泊所兼保護施設であり、職業紹介や職業訓練日本語教育を行い、困窮する外国人の自立支援をされているようであった。Xさんはシェルターを見学しながら担当者の方やここに案内していただいた資料館説明員の方に熱心に質問されていた。

 私はこの外国人向けシェルターの写真は撮影しなかったのだが、シェルターに関しては、行政書士の柴田さん(という方)の事務所の業務週報

 https://officeshibata.jvj.co.jp/info/2020-novembro-3/

に写真付きで詳しくシェルターの事情が書かれていて、大変参考になった。興味、関心をお持ちの方々にはぜひご一読をおすすめしたい。下記に関連箇所を引用する。

ブラジリアンプラザの2階は昔はブラジル料理のレストランだったのですが、リスタートコミュニティーと呼ばれる生活困難に陥った外国人労働者の一時避難シェルターが6月に作られ稼働していました。41室の個室が作られ現在15名が入居中、入居者は中高年の日系ブラジル人が多い印象、入居費は無料で生活保護を取らせるようなことはせず寄付やバザーの売上で自活、日本語を勉強し、職が見つかればまた出ていくというシステムだそうです。一攫千金を夢見て日本に来たのに、こんな結末になるとは悲劇以外の何者でもありませんが、ブラジルに移民した日本人移民も同じじような状況だったわけで、これが移民の実情なのかもなのかもしれません。

 この外国人向けシェルターは、オープン直後、

https://mainichi.jp/articles/20200621/ddl/k10/040/136000c

新型コロナ 生活困窮、外国人に寄り添う 大泉に支援施設 一時保護、職業訓練など担う
新型コロナ 生活困窮、外国人に寄り添う 大泉に支援施設 一時保護、職業訓練など担う

新型コロナ 生活困窮、外国人に寄り添う 大泉に支援施設 一時保護、職業訓練など担う

https://www.asahi.com/articles/ASN6R5SYBN6MULFA02Z.html

みずから立ち上がった日系人 仲間の苦境、手弁当で支援

https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/220240

《新型コロナ》困窮の外国人の一時保護施設 大泉に支援センター

のように、大手マスコミや地元マスコミでニュースとして取り上げられたようである。

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写真07 日本定住資料館に展示されていた当時の大泉町観光案内所PR資料

 ブラジリアンプラザ訪問後、ついでに近くのブラジル料理食材店兼軽食店に立ち寄ってもらったのだが、ブラジル料理食材店がベトナム産の緑豆やカップラーメンなどベトナム料理の食材を取り扱っていることがわかり、おもしろく感じた。

 

 今回Xさんにご同行させていただいたおかげで、ブラジリアンプラザの(日本定住資料館だけではなく)リスタートコミュニティー支援センターも見学させていただくことができ、日系ブラジル人事情についても様々なご教示もいただくことで、日本国内の日系ブラジル人コミュニティーについて多様な面から理解を深めることができて、有意義であった。この場を借りて、Xさんに深く感謝申し上げる。

 

***ブラジリアンプラザの情報***

 施設名:ブラジリアンプラザ 日本定住資料館

   住所:群馬県邑楽郡大泉町西小泉4-11-22

電話番号:0276612038

ウェブサイト: https://www.oizumimachi-kankoukyoukai.jp/index/

 

〇関連情報〇

 群馬県大泉町のブラジル人コミュニティーやブラジルタウンを取り上げた記事やブログのエントリーは多数存在するようだ。下記に紹介する記事やエントリーはその一部である。 

https://www.refugee.or.jp/fukuzatsu/yugohirano01

「日本語も母語も中途半端」そんな子どもたちのために。大泉の「ブラジル人学校」23年間の軌跡

 日系ブラジル人の教育事情や教育問題を知るうえで参考になる記事。

 

http://www.waseda.jp/sem-muranolt01/SR/S2017/S2017-kawasaki.pdf

多文化共生社会実現への道筋―群馬県大泉町を事例として―

 早稲田大学の学生の方のゼミ論文のようである。PDFファイル。参考文献や参照URLも掲載されている。

 

http://nippon-sumizumi-kanko.com/b-braasiltown-oizumi.html

あっちもこっちもブラジル!群馬県大泉町の「ブラジルタウン」に行ってきた!

 2018年10月の訪問記のようである。

https://indochina0048.blog.fc2.com/blog-entry-164.html

 2019年のエントリー、参考文献も掲載されているようである。

http://kyotrain.blog.jp/archives/41763557.html

日本のリトルブラジルこと群馬県大泉町を訪ねて考えたこと

 2020年9月か、それより前の訪問記のようである。

 

http://www.avance-corp.com/blog/20150611173148.html

『今月の一言』(2015/06/11)

 ブラジリアンプラザ関係者の方のエントリー、数年前は老人ホームへの改造計画もあったようだ。